薬膳カレー(笑)

 先日北鎌倉近辺を歩いていたらやたら「薬膳」をアピールする店が目についたので失笑を禁じえませんでした。バカを騙すには便利な言葉なのでしょう。

 「なんとなく」のイメージで体によさげなものを適当に取り入れ、適当に提供して、適当に受け入れてわかったつもりになるのは日本人によくあることです。日本で薬膳料理と主張しているものは、「体にいい漢方生薬を配合した」というのが大体の共通した売り文句で、そもそこそこからしておかしいわけでが、中には「薬膳カレー」なるものもあるようでそこまでいくともう意味不明ですが、いかにも日本人的発想だとも言えます。

 生薬にはいろんな効果や性質があります。それらを中医学的に見た診断=証にあわせて組み合わせたのが中薬、日本で言う漢方薬です。

 漢方薬の構成として「君臣佐使」というものがあります。君薬はその薬の主となる生薬、臣薬は君薬の効果を高める生薬、佐薬は君薬の副作用を抑えたり、主症状とは違う症状に対応したりする生薬、使薬は君臣佐を調和させ、必要な部分にまで届ける生薬です。

 日本の漢方薬の処方は固定的ですが、中薬の場合はさらに個人にあわせて加減が行われます。「証」に合った処方であれば薬として有効ですが、合っていなければ最悪症状を悪化させる方向に働きます。

 つまり端的に言って自分の症状に合った薬以外はすべて毒なんです。

 さて、日本の薬膳料理やら薬膳カレーはそのへんのところちゃんと考えて作られているんでしょうか?素人が「君臣佐使」の組み合わせも知らず、ただ生薬をカレーにぶちこんだところで体にいいものができるとは思えません。

 もしかしたらその配合に合った証の人がたまたまいるかもしれませんが、しかし大部分の人には合っているはずがありません。つまり大部分の人には毒なわけです。万人に合った処方なんてありえませんから、体にいいはずありません。

 ただ、それでも大きな問題が起きないのは、薬膳料理のたぐいに適当に混ぜられている生薬の組み合わせを一回食べた程度では、体に対して影響を及ぼすことはほとんどないからです。逆に言うと、仮にその組み合わせが体に合っていたとしても、それが何らかの効果を顕すこともありません。だから薬膳料理など健康に対して何ら寄与することがないバカバカしいものです。

 だいたい、何らかの薬効を期待してそんなもを食うなら最初から素直に漢方薬を飲んでおけばいいだけの話で、結局のところ薬膳料理などという謳い文句に引かれる人間は、本気で体にいいものを求めているわけではなく「体にいいものを食べたつもり」になりたいだけなのです。