常識という「芯」がない人は騙されやすい

 鍼灸の仕事をしていると医学的に、あるいは常識的に考えて噴飯物な「健康知識」を持ち出す患者さんに出会うのは珍しいことではありません。日本人の特性なのか、テレビなどで垂れ流される情報を、裏をとらずに根拠なく信じる人というのは多いものです。

 「いろんな情報が多くて何を信じればいいのかわからない」という人に出会ったこともありますが、こういう人がしまいにはカルト宗教の類に騙されるのだろうと思いました。こういう「芯」がない人に何を言っても無駄なので、鍼灸を信用させるように誘導することはしませんでしたが。

 私が聞いた「健康知識」の中でもハイレベルな頭の悪さだったものがいくつかあります。まず、一つは「牛乳は子牛が飲むためのものなので人体にはよくない」というもの。これはかつて同居していた女性が言っていたことで、牛乳は体に悪いからと豆乳を飲んでいました。

 しかし、牛乳が人体に悪いというのは「本来子牛のためのものだから」という恐ろしく知能が低い根拠意外にはありません。ところが、大豆に含まれるイソフラボンについては食品安全委員会が公式に過剰摂取を控えるべきだという見解を示しています。

 右に進むと危ないという噂を真に受けて、「危険」と看板が出ている左に進むのは愚かなことだと思います。

 もう一つは、「白砂糖は漂白剤で漂白しているので体に悪い」というもの。まず、白砂糖は白く見えますがつぶを取り出して見ればわかるように実際は透明な顆粒の集合です。これは純粋な糖のみを取り出した結晶だからで、白く見えるのは光の屈折によります。つまり雪が白く見えるのと同じ原理であって、白砂糖が白いのは漂白したからだというのは、雪が白く見えるのは漂白したからだと言うに等しいことだと言えば、どれだけ愚かなのか分かると思います。

 もちろん、牛乳にしろ砂糖にしろ、摂り過ぎたら体に悪いのはあたりまえです。しかしそれは常識的な限度を守ればいいというだけの話です。

 他にもマクロビオティックやら、ナチュラルハイジーンやら、中医学や医学の常識で完璧に否定できるインチキな「食養生」の類を信奉している人もいるのでわりと困ります。