プロが中国語を理解できないと医療過誤を起こす

 以前、一般向けの健康雑誌に湿邪」をテーマにした号があったのでちょっと目を通してみたことがあります。その中に「湿邪は脾胃の働きに影響を及ぼし、脾胃は肌肉を司るのでアトピーなどの症状が出やすい」みたいなことが書いてありました。

 湿邪がアトピーの症状にかかわってくるというのは間違いではありません。ただ、文脈から見るとどうも肌肉の「肌」を皮膚と勘違いして、その上でアトピーのような皮膚症状が出ると主張しているようなのです。「肌肉」は日本語に訳すと「筋肉」です。中国語の「肌」に「はだ」という意味はありません。付け加えると中国語の「筋」は日本語に訳すと「腱」です。

 湿邪がアトピーを悪化させるのは、湿の停滞によって肺の宣発機能が滞り、皮膚の水分量が正常に保たれなかったり、そこに熱が加わって刺激を与えるからです。また、脾胃の機能が低下するのは確かですが、それよよって脾気が司る肌肉に影響を及ぼすからではなく、脾気が上手に水分を肺まで供給することができなくなるゆえに、肺が皮膚を潤すことができなくなるからアトピーの症状が出るわけです。

 件の記事を書いたのは漢方薬の先生でしたが、素人ならともかくプロがこんな間違いをしてはいけません。こんなバカな間違いは医療過誤につながります。中医学の用語というのは全部中国語で、日本語の単語と意味が共通するものもありますが違うものもあるのです。

 だから肩こりや腰痛治療する程度しかできない低レベルな鍼灸師は別として、鍼灸や漢方薬を扱うプロはまず中国語が理解できてないとダメなんです。日本の伝統である「読み下し」のようないい加減な読み方では、中国語で書かれた文章をちゃんと理解することなんてできっこないんです。

 例えば、日本の道教研究家が書いたものを読むと、古典漢文は当然のこと現代中国語もできる人が多いようです。しかし、これは中国の文化を研究する上であたりまえのことです。ところが、このあたりまえのことができる鍼灸師はほとんどいない。

 確かに鍼灸師は臨床家であって研究者ではありません。しかし、むしろ臨床にあってはその専門性は研究者より上であることが求められます。なぜならば臨床家は研究者にはない患者さんへの責任がかかっているからです。