坐骨神経痛

 坐骨神経痛は腰椎から出て下肢の後ろ側を通っている坐骨神経が、何らかのの原因により圧迫・刺激されて起こる腰部の痛み、及び下肢への痛み・しびれ感などの一連の症状のことを言います。

 その原因の多くは、腰椎椎間板ヘルニアですが、腰椎すべり症・脊椎管狭窄症などの腰椎の変形、臀部にある梨状筋という筋肉の緊張による圧迫、また、稀に腫瘍などによる圧迫が原因になることがあります。

中医学での坐骨神経痛の考え方

 坐骨神経痛は「痺症」に分類されます。痺症とは気の流れが阻害されて起こる症状の総称です。

 その原因として、主に1.外邪によるもの2.気血の滞りによるもの3.気血の不足によるもの、に分けられます。

1.外邪によるもの

 外邪とは、気候変化が過度に身体に影響を及ぼしたもののことですが、坐骨神経痛の場合は風邪・寒邪・湿邪またはそれらが複合して経絡を阻害しているものが多くなります。寒邪は冷えにより気血の流れを阻害し、湿邪は経絡に留まって流れを阻害します。また、風邪は寒邪や湿邪と容易に結びつき、経絡を移動するので、風邪と結びついた場合症状があちこちに移動する場合があります。

2.気血の滞りによるもの

 外邪による影響はないものの、内臓の働きが悪くなったために気血の運行が滞ったために起こるものです。一般的にも知られるところでは、?血という血液の滞りがあります。

3.気血の不足によるもの

 大量の発汗は気を奪い、気が不足します。また、飲食の不摂生があると、充分な気血がつくられません。長期の疾病により気が消耗することもあります。こうした原因で気血が不足すると、経絡を充分に運行することができなくなり、痺症を生じます。

坐骨神経痛の治療

 上記の原因を除くことが治療の基本となります。即ち外邪が原因の場合は外邪を除き、気血の滞りが原因の場合は、気血の運行を促し、気血が不足していれば、気血を養うことが治療の主眼となります。

 ただし、実際の臨床では、ほとんどの場合腰椎周囲の問題(ヘルニアやすべり症)が原因なので、腰周りの治療を主とし、下肢の経穴を刺激することにより下肢への気血の流れを高めるという方法をとることが多く、また、経験上ほとんどの症状はそれで軽快します。それでも治りにくいという場合には、上記のような中医学的な根本治療を加えることになります。

経過

 坐骨神経痛と鍼治療は相性が良く、症状が軽ければ3~4回の治療で痛みが軽減し、2~3ヶ月の治療で痛みが半減~消失に至ります。とはいえ、痛みが消失したとしても、ヘルニアなどが原因の場合再び痛みが出る可能性があるので、日常の自己ケア及び、定期的な治療は必要となります。

 また、医師が手術を勧めるようなレベルの重度のヘルニアや、腰椎の変形(すべり症・脊椎管狭窄症など)が原因の場合は長期の治療が必要になることもあります。