玄通堂の基本方針

 ここでは当玄通堂がどのような方針を持ち、どのような目的をもって運営されているかをご説明します。

当会の目的

 文明が発達し、便利な社会になった反面、それに反比例するように、人間の体はどんどん弱くなりつつあります。そして、それだけ医療に対する要求も増大し、多様化しています。

 私はマスコミや我々の同業者が軽々しく批判する大規模医療施設・巨大病院を否定しません。もちろん、責任感の希薄さから起こる医療過誤・ミス・事故については批判してやみませんが、それは実は小規模な医療施設でも起こり得ることであり、医療にたずさわる者として須らく戒めとして心にとどめなくてはならないことです。

 現実には最新設備が整った大きな病院でなければ助からない病気の方もいらっしゃるのですから、ただ徒に大きな病院の存在を批判してみせても無意味です。

 しかし一方で西洋医学では対応できない病や症状が増えてきているのも事実です。それら西洋医学が不得手とする症状は、人の体のバランスを整えることで治療する東洋医学が得手とするものが多く、現在漢方薬や鍼灸のような東洋医学には、西洋医学に替わる「代替医療」として注目と期待が集まっています。

 玄通堂は、正しい伝統中国医学の知識と技術を用いた鍼灸治療、代表の長年の研鑽を経た太極拳の指導を以て地域の「代替医療」の役割を担い、皆様の健康回復・維持に総合的に貢献することを目的として運営されています。

 ボランティア団体ではないので当然治療に対する報酬はいただきますが、金儲けが第一義ではありません。

当会鍼灸治療の基本方針(ポリシー)

 当会のポリシーは、あくまで「医療」としての治療をもって公に奉仕するということです。そのために、以下の方針に沿って運営されます。

「癒し」ではなく「治療」

 本来あるべき「癒し」とは社会や宗教が与えるべき「心の平安」であり、鍼灸治療が与えるべきものではありません。

 怪しげな、宗教がかった治療院や、無免許の整体院などといったところほど「癒し」という言葉を掲げているようですが、少なくとも当会では治療=癒しではありません。

 以前、「癒し」を期待してこられた患者さんが何人かいました。そういった人々が求めていた癒しとは、端的に言えば「甘え」でしかなく、相手の甘えを認めるだけでは治療にならない場合が多々ありますから、治療のために必要ならば厳しいことも要求する私に失望して帰っていったこともしばしばありました。

 しかし逆に、生活改善や心の持ちようなど、時には厳しすぎるような私の要求をきちんと取り入れてくれた患者さんは、それに応じて治療効果も上がっていきました。こうしたことから、私は自分の治療には癒しの要素など必要ないと確信するに至りました。

 当会の治療はマッサージ(または一部の鍼灸)のような、治療の過程での「気持ち良さ」を与えるものではありません。病気の予防や症状の軽減・治癒といった結果を出すことを第一義としています。

医療=サービス業という認識の否定

 数年前から医療もサービス業であるという考え方が広まってきています。これは、訴訟王国アメリカで始まった考え方です。訴訟を起こされる面倒を避けるために、サービス業的な性格を医療にもたせたということは、考えなくてもわかることですが、日本では一部の医療機関に無批判に取り入れられ、甚だしくは患者さん「患者様」と呼び、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」などと言うということが起こっています。

 こんなばかなことはありません。医療は医療です。サービス業の下の一分野としてあるべきものではありません。サービス業・農業・製造業といったものに並ぶ一分野としてあるべきものです。もし医療をサービス業の一部として貶めるならば、つまり患者さん=お客様へのサービスが第一としてしまうならば、「痛いのはいや」「苦い薬はいや」という患者さんの拒否にあったときに、どうして適切な治療ができるでしょうか?

 私も患者さんが第一と考えています。しかしそれは、サービス第一ではなく、あくまで患者さんを少しでも楽にしてあげることが第一ということなのです。医療としてできるサービスがあるとすれば、できるだけ患者さんの不安を取り除くように分かりやすく説明し、できるだけ適切な治療を提供するということであり、患者さんをお客様扱いすることではありません。

安全性を高める

 ごく稀に、鍼治療による肝炎などの感染や、肺に穴があく気胸などがニュースになることがあります。前者は治療する側の衛生管理の問題、後者は技量の問題です。

 衛生面に関しては、当院は日本鍼は使い捨て、中国鍼は患者さん専用鍼を使うごとに高圧滅菌することで感染リスクを排除しています。

 技術面については、肺がある部位には斜めに刺すことで肺に向かって鍼が刺さらないようにしています。

 安全性に100%はないかもしれませんが、少しでもそれに近づくように心がけています。

できるだけ分かりやすい説明

 中国医学は西洋医学とはまったく違う体系で成立しているので、わかりにくい専門用語が多いのですが、治療に際してはできるだけ分かりやすい言葉に噛み砕いて説明するようにしています。

手を抜かない治療

 難病治療では強い刺激や痛みを感じる治療を要することがあります。それを患者さんがいやがったとき、営業的に患者さんを引きとどめるために要求を聞いて治療の手を緩めるか?たとえその患者さんが去ることになろうとも最後まで手を抜かず必要な治療を行うか?私は後者を選びます。