肩こり

 肩こりと一言で言ってもそのタイプは様々ですが、ここでは「首・肩・背中の上部・肩甲骨周辺」における筋肉の慢性的な緊張及び、それが引き起こす痛み、だるさ、重さをなどを伴った症状として考えます。

中医学的な肩こりの考え方

 肩こりは中医学的に言えば「痺症」に分類されます。痺症というのは様々な原因により気血の流れが滞ることで起こる症状のことです。

 中医学では「不通則痛=通じなければ痛む」という表現をしますが、何が通じていないかというと気血の流れが通じていないということです。

 肩こり自体は痺症の中でも軽度のものですが、放置して重症化すれば頭痛・めまい・不眠などを引き起こすこともあるので、早期の治療が重要です。

肩こりの治療

「不通則痛=通じなければ痛む」に対して「通則不痛=通じれば痛まない」という言葉があります。治療は滞っている気血を通じさせることが主眼となります。

 しかし、肩こりの場合凝っている部分だけを通じさせればよいというものではありません。もちろん凝っている部分のみを治療してもある程度は症状を改善できますが、患者さん本人があまり関係ないと思っている部分にも着目することで、より改善が期待できます。

 例えばデスクワークで常にキーボードを叩いている人は前腕、立ち仕事の人はふくらはぎの緊張をゆるめることで肩周囲の緊張もゆるまる場合があります。また、歯のかみ合わせが悪い人は顎の周囲の緊張、目が悪い人は目の緊張を緩めることで肩こりを緩和させられます。

無針鍼で治療するメリット

 通常の鍼治療で治療する場合、肩周囲に刺すときには非常に気を使います。なぜならば横隔膜の上には肺があり、鍼を深く刺してしまうと肺に穴をあけて肺気胸を起こしてしまう危険性があるからです。

 しかし無針鍼は鍼を刺さない治療ですので、背中や肩周辺のどこにでも刺激を与えられます。特に肩こりの治療に有効な肩井(肩の上にあるツボ)や欠盆(鎖骨上部のくぼみにあるツボ)などは肺に非常に近い場所なので通常の鍼を刺す場合はとても浅くしか刺せませんが、無針鍼はこれらの経穴も有効に活用することができます。

 例えば「肩甲骨の裏側」にこりを感じている人は多いと思いますが、肩甲骨側から治療するのはなかなか難しいことです。しかし、欠盆に対して刺激を与えれば肩甲骨の裏側まで刺激を届けることができ、こりを軽減することができます。

 このように無針鍼は鍼を刺さないことでより有効な肩こりの治療ができます。

肩こり治療の問題点

 肩こりというのは治療を行えば改善しやすい症状です。しかし、仕事場で長時間同じ姿勢をとる等のことが原因になる場合が多く、いわば常に「なり続ける」症状であるために一度改善してもまた症状が戻ってしまいます。

 そのため肩こりを高度に改善するためには定期的な治療の継続だけではなく、日常生活での運動・ストレッチなどに気を使う必要が出てきます。自覚的に体のケアをしていかなければいけないのが肩こり治療の難しい点です。


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