不定愁訴症候群は、倦怠感や頭痛、食欲不振など様々な症状が起こりながらも、原因を特定できない一連の状態を指します。
自律神経失調症や女性の更年期障害などが不定愁訴症候群に入ります。
不定愁訴症候群の治療は西洋医学がもっとも苦手とし、逆に東洋医学が得意とするものです。なぜならば、西洋医学は病気を起こしている原因を取り除くことを主とする治療を行いますが、東洋医学はその症状を起こしている体の状態を整えることが主となるからです。
中医学での不定愁訴症候群の考え方
不定愁訴症候群は様々な症状の総称ですから、個々の患者さんによってその症状を起こしている体の状態も同じくくり方はできない部分がありますが、大雑把に2つの類型に分けて考えてみます。
1.陰虚タイプ
これは血液や津液(血液以外の水分)が不足している状態です。
中医学では人体は水冷式と考えています。体には熱が必要ですが、その熱を冷やして人体にちょうどいいように調整しているのが津液です。
この体を冷やす水分が不足した状態を陰虚と呼びます。
冷やすための成分が不足していますから、熱の症状が主となります。のぼせや体のほてり、のどのかわき、盗汗(寝汗)、精神不安などが代表的な症状です。
また、健康な人間は日中は陽気が盛んになり、夜間は陰気が盛んになることで活動と休息のバランスをとっていますが、陰虚になると夜になっても陽気を冷やして鎮めることができないので、不眠になったり夜間の頻尿が出たりします。
このタイプは女性の更年期障害に多いと思われます。
2.陽虚タイプ
これは人体を活動させるもとである陽気が不足している状態です。
陰虚とは逆に、冷えの症状が主となります。倦怠感、無力感、手足の冷え、食欲不振などが代表的な症状です。
日中に盛んになるべき陽気が足りないので、一日中眠気がしてぼーっとしたりします。
不定愁訴症候群の鍼治療
鍼で治療する場合はまず陰虚であるか、陽虚であるかを見極めます。その上で、どこに何が足りないのかを見極めます。
例えばのぼせがある場合、肝の陰虚が原因であることが多いので、肝の働きを押さえ体内に水分を取り込む機能を高めるような治療を行います。
全身倦怠がある場合は腎虚や脾虚が原因であることが多いので、腎気を補いつつ、エネルギーを吸収しやすいように消化機能を高めるような治療を行います。
冷えの症状が強い場合は、灸を併用して体が温まりやすくすることもあります。
このように、不定愁訴症候群の治療には様々な対応の仕方があります。この応用力の高さが東洋医学が不定愁訴症候群の治療に向いている理由です。
経過
陰虚にしろ陽虚にしろ、足りない部分を補うことができれば症状は軽減していきます。しかし、体の機能を改善していかなければならないので治療には長い期間が必要となる場合がほとんどです。
はやければ1ヶ月~2ヶ月で症状の軽減が見られますが、半年~1年以上の治療を要するものがほとんどです。